【日本の弓術/オイゲン・ヘリゲル】

ドイツの哲学者であるヘリゲル氏が弓道を通して禅の精神を学び、日本への理解を深めたというお話です。合理的・論理的な西欧思想であった著者が非合理的・直感的な日本の思想に触れ、困惑しながらも弓道の達人・阿波師範の元で6年の時間を経て「無の射(=禅…

【あなたの人生の物語/テッド・チャン】

練り込まれたSF世界が詰まった短編集です。あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)作者: テッド・チャン,公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2003/09/30メディア: 文庫購入: 40人 クリック: 509回この商品を含むブログ (401…

【時のらせん公式ハンドブック/真木孝一郎】

「マジック:ザ・ギャザリング」のカードセット、《時のらせん》の解説本です。「時のらせん」の特徴は以前に出ていた数々のカードセットから有名なカードを再録したタイムシフトカードと、そういった有名カードに新機構を取り入れたり組み変えたりしてバラ…

【ダブルクロス・リプレイ・オリジン 偽りの仮面/矢野俊策】

「ダブルクロス(TRPG)」のリプレイ本。ダブルクロスを遊んだことがない人でも、TRPGの経験があれば巻末の用語集や文中解説で楽しく読めるようになっております。シナリオ性が高いと評判のF.E.A.R社のゲームのリプレイは初めて読みましたが、ゲーム自体が他の…

【老ヴォールの惑星/小川一水】

久々にいいSFを読んだなぁという感じです。表題作含む4編はどれもしっかりとした読み応えあり。話のまとまりとしては「老ヴォールの惑星」が、展開の意外性としては「ギャルナフカの迷宮」が好きです。 老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクシ…

【ウィザードリィ日記/矢野徹】

パソコン黎明期*1、当時還暦を越えていた翻訳家の矢野さんがゲーム「ウィザードリィ」を通してパソコンに触れはまり込んでいく日記。 ウィザードリィ日記―熟年世代のパソコン・アドヴェンチャー (角川文庫)作者: 矢野徹出版社/メーカー: 角川書店発売日: 198…

【ダニにまつわる話/青木淳一】

ダニの種類は数十万種。自然の一部としても大事な働きを担っているダニについてのお話です。自然観から見つめた優しい視点と丁寧な文体で書かれたエッセイが「ダニ=害虫」という嫌なイメージを払拭してくれます。ダニという小さな虫に目を向けた時、次第に…

【ガストン・ルルーの恐怖夜話/ガストン・ルルー】

「オペラ座の怪人」で有名な作者の恐怖短編集。訳者の腕か作者の語り口の滑らかさか、序盤からしっかりと薄暗闇の世界に引き込んでくれます。古典ではありますが、丁寧な描写や巧みな演出により人物や情景が色褪せずに浮かび上がってくるのは見事。 ガストン…

【ディセンション公式ハンドブック/真木孝一郎】

「マジック:ザ・ギャザリング」のカードセット、《ディセンション》の解説本。すでにゲーム自体からは離れていても、読むと遊び倒していた頃を思い出してワクワクしてしまいます。このセットではギミックの面白さというよりはエクステンド環境でも使えそう…

【超人計画/滝本竜彦】

引きこもり作家がネガティブな生き方を脱出するためのプロジェクト「超人計画」から全力で逃避し続けるお話。「脳内彼女」とか「自己価値の否定」とか自虐的な文章が強烈に痛々しい。結婚式を終えたばかりの友人がにこやかに貸してくれましたが、はてさてど…

【ビジュアル博物館・城】

城の発生から中世の城へと移っていく変遷、その機能やそこでの人々の暮らしなどについて書かれています。豊富な写真資料と分かりやすい説明で、資料を読むのが苦手な方でも興味深く読めるようになっているこのシリーズ。特にお城については案外知らない部分…

【湖畔亭事件/江戸川乱歩】

表題作の他に「闇に蠢く」を併録。江戸川乱歩初期の連載長編から2編です。展開に難渋したといわれるだけあって、所々欠けているような感じが確かにチラホラ。とはいえ異常心理性やエログロ成分でなかなか楽しめる仕上がりです。 ※講談社文庫版がなかったので…

【無人島暮らしの手帖/朴相俊, 李宇逸, 朴敬秀】

学校で習ったぐらいの知識と身の回りの簡単な道具を利用して無人島で暮らせるかという本です。物語仕立てになっているので読みやすくなってます。図説がもうちょっと詳しく載っていると豆知識本として良かったかも。 無人島暮らしの手帖―一人で生き抜くため…

【ソングシーカー/小林正親】

「ローズトゥロード(TRPG)」のリプレイ本。ゲームをプレイしたことがなかったのでなんとなく敬遠していたのですが、読み始めたら面白くてあっさり読みきってしまいました。ここに書かれている冒険は実にTRPGらしい驚きと偶然に満ち溢れています。それでいて…

【「妖怪」の謎と暗号/歴史の謎研究会】

コンビニや売店などで見かけるタイプの文庫本ですが、分かりやすい妖怪の解説とそれぞれにきちんと発生への解釈が付けられていて、ちょっとした妖怪博士になれます。先日読んだ「ミステリ百科事典」に収録の「妖怪学入門」とは発生の解釈がちょっと違ってい…

【ミステリ百科事典/間羊太郎】

【背景画集・草薙】

家庭用ゲームの仕事だと背景を描くことがあるので、その描き方の参考に買ってみました。内容はゲームやアニメなど各作品毎に数枚選ばれていて、幅広く押えてあるカタログみたいな感じです。幻想的なものが多く日常風景は少なめなので、背景の資料としてはち…

【つかめ!明日の大勝利】

つかめ!明日の大勝利―新ソード・ワールドRPGリプレイ集〈2〉 (富士見ドラゴンブック)作者: 秋田みやび,グループSNE,浜田よしかづ,清松みゆき出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2001/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (8件) を…

【続・ウィザードリィ日記 未来はバラ色/矢野徹】

ウィザードリィ日記とありますが、実のところ「ウィザードリィ」とは何の関係もないエッセイ集です。元々は「EYE・COM」という雑誌で連載されていた「未来はバラ色」という記事らしく、前半は時事ネタを取り込んだエッセイ、後半はそのエッセイ用の掲…

【ファイナルファンタジーXI プレイ日記/永田泰大】

穏やかな文体と気張らないプレイスタイルで語られる、ひどくノンビリしたプレイ日記です。そしてまた優しくて温かくてちょっと切ない冒険録です。 日記の中で極力ゲーム固有の言葉を使わずに描写されるヴァナディールの様子は、独自の決まり事で動いている奇…

【ゲーム的人生論/鈴木銀一郎】

現在70歳ちょっとという長老ゲームデザイナーの鈴木銀一郎さんが書いたエッセイ集。「ゲームと人生」をキーワードに人生でのゲーム体験やら、そこで学んだゲームと人生の共通する法則が出し惜しみなく書かれています。 全編を通して鈴木さんの行動は「想定し…

【進め!未来の大英雄】

「ソードワールドRPG(TRPG)」の新シリーズリプレイ第1巻。ソードワールドを遊んでいたのは実に十年以上前の話なので、当時遊んだ感じを思い出しながら楽しく読めました。ルールの細部はちょっとづつ変わっているようですし、「魔法戦士リウイ(小説)」と…

【死体は知っている/上野正彦】

人間の身体の内側を覗くと、外で起こった事件が見えてくるという逆転が面白いですね。取りあえず窒息死はうっ血を、溺死は肺の水を、外傷は生活反応を見るらしいと覚えましたよ。 死体は知っている (角川文庫)作者: 上野正彦出版社/メーカー: 角川書店発売日…

【薔薇のミルフィーユ、未来の白地図/今野緒雪】

なんとなく植田佳奈ブームが到来で、ひさびさに読んでみましたよ。物語ではそろそろ年末で3年生が卒業間近。2年生の妹問題にもそろそろ決着が、という感じ。あまり大事件とか起きない所が安心しますね。

【小さな骨の動物園】

骨は動物を形作り、動物は環境を変化させ、環境は骨に影響します。微妙な相互作用の連鎖を想像しながら骨の透き間の向こう側を覗くのはとても楽しいです。小さな骨の動物園 (INAX booklet)作者: 盛口満,西澤真樹子,相川稔,安田守,安部みき子,瀬戸山玄,建築・…

【影のジャック/ロジャー・ゼラズニィ】

初ゼラズニィです。随分前に友人が貸してくれていたのをやっとこさ読みました。サンリオSF文庫は絶版なんですね。 堆屍穴や逆鱗城、盾など魅力的な要素を散りばめながら、ザクザクと物語が展開します。その余白を想像させながら読ませてくれるのは、なかなか…

【関東大震災/鈴木淳】

80年前の震災直後の動向を消防やボランティアの視点から捉えています。膨大な参考資料から描かれる被害の状況と罹災者の動きが、当時の混乱振りを垣間見させてくれます。 やはり消防やボランティアは市民レベル地域レベルでの身近な活動がとても大きかった…

【くるぐる使い/大槻ケンヂ】

小中学校時代によくあった「どうかしてる」ような妄想や思い込みが小説に昇華した印象です。改めて考えてみると、そんな「どうかしてる」という感覚は身の内や日常のすぐ傍に隠れているんですよね。読んでいると荒唐無稽な物語になんとなくリアルを感じるの…

【魔術師の大失敗/テリー・ブルックス】

ドタバタとメインキャラクターが動き回る今作は、娯楽性が高く私向きでした。アバーナシイとクエスターの活躍ぶりや起伏のある事態の発展の仕方、最後の山場まで見所が多いのも特徴です。 映画になるとの噂もあるので、せめてこの三作目までは作って欲しいと…

【海洋奇譚集/ロベール・ド・ラ・クロワ】

海で起こった不思議な事件を生き残った船員の証言、当時の状況、船乗りだった作者の経験を通して一つにまとめなおしたものです。事実から離れ過ぎず記録に寄り過ぎず書かれた文章からは、漂流の絶望感がジワリと感じられて背筋がゾクゾクします。 後半は調べ…