【冷血連続殺人鬼 勝田清孝事件/大下英治】

戸締りはしっかりと

 冷酷な殺人鬼と勤勉な消防員の二面性を持つという連続強盗殺人犯、勝田清孝についての考察本です。高校時代から順に勝田清孝の生涯と各事件の経緯を、関係者の証言や当時の記録などから読み解いていきます。
 読んでみると、勝田清孝自身は「人柄のいい隣人が実は殺人鬼」みたいなゴシップじみた存在ではなく、表出した二つの要素の間に「罪の意識が薄くひどく自分勝手な人間性」が隠れていることが分かります。実際の事件では強盗目的による口封じが多く、殺人すら辞さない強盗といった感じです。そして証拠を残さない冷静さが長い間に渡って犯行を継続させていたようです。
 
 丁寧に書かれていますが、文中のインタビューや記録にはそこから考えられる筆者の推察の部分が多く、それなりにフィルタリングされていることも考えると事件の資料として扱うには向いていないでしょう。
 ただヒヤリとするには十分で、巻き込まれる被害者側の理不尽な不幸が感じられます。